コア材トレーとロレックス

ご予約のフォームからご連絡をいただいたTさま。
ご予算を20万円程に設定して時計ケース選びです。
せっかくのご来店なので、いろんな木材を実際に見て比較して行きます。
そして、一緒に時計用トレーもチェックしてみます。




まずはサイズ感のチェック

ご予約のT様がご来店です。
ありがとうございま〜す。

早速ですが
まずはWEBサイトではわかりづら〜い、
かもれない
時計ケースのサイズ感をチェックしてみます。

っと
ほとんどのお客様が

「結構大きいですね〜」

という感想をもたれる様です。

これはおそらく
現在ご使用中の「何かしらの時計ケース」と比較しての感覚の可能性がございます。

確認のためT様にお聞きすると
やはり、そのようです。



一例として
ヨーロッパ製時計ケースの場合、
ソウルバードの時計ケースと比較すると
約2cm程、高さが低くなっているものが多いようです。

昔、むか〜しは
ほぼ、ポケットウォッチかドレスウォッチの収納が前提でしたので
そのサイズに合わせて
各ケースメーカーが制作していたのではないかと
推測できます。

それから時間が経ち
時代の変化とともに、
現代では
結構ビッグサイズの時計が
多く販売されるようになりました。

しかし、
そういったビッグサイズの時計が増えたにもかかわらず
各ヨーロッパメーカーの
時計ケースのサイズはアップデートされずに
現在に至っているようです。

蓋を閉める際に

「時計が蓋にあたる!」

ということは
日本のお客様にとっては

あってはならない事だと思いますが

ヨーロッパのお客様の場合
結構、気にされないようです。

っというか
スーツケースのように
蓋で押し付けて閉めないと
物理的に

「閉まった」

っという感触がないのかもしれません。

その
未だにサイズがアップデートされない
ヨーロッパ製の時計ケースを
単純に「コピー」しているのが
「アジア製」の時計ケースかと思っています。

そもそも
「時計を収納するため」
といったポリシーより
「ヨーロッパ製の形のコピー」を前提としている、
と考えた場合
合点がいきます。

ただし、現在では
「パネライ」さま、
「ブライトリング」さま、
「IWC」さま、
「ウブロ」さま、
「リシャールミル」さま、

といったサイズが大きい時計を発表されるメーカーさまも多く、
さらにはゴッツイ革ベルトの時計や
ベルトの形状が硬い、
ラバーベルトの時計も増えています。

そういった時計も含め
「全てのリストウォッチを収納する」
という事を日々研究した結果、
現在のソウルバードの時計ケース形状が生まれています。

仕事柄
かなり多くの種類の時計を見ていると思っています。

一応
かなり珍しい
「時計ケースのプロ」ですので…(笑)




ご予算を20万円程で選べる木材

さて
ご予約の段階で、
「20万円程のご予算」
とのお話をお聞きしていましたので
早速、どんな材で制作が可能かをチェックしてみます。

Tさまの場合
「メイプル材」「オーク材」といった材を
前提とされていませんでしたので
かなりピントを合わせて
比較してみます。

まずは
ご予算にほぼピッタンコの
「けやき材」です。

「えっ!けやきが20万円で買えるの?」
っと思った皆さま、

そんなあなたは
結構ピントがあっています。
かなりブログを読み込んでいただいているかと思います。

はい、訳ありです。

「割れている」とか
「臭い」とか
「すぐ壊れる」とか

………………………………………..

そういった事ではなく
「植林材」だからです。

別に植林材が悪い訳ではありませんが
入手が困難な樹齢が500〜600年といった天然のけやき材と比較すると
やはり、だんぜん入手がしやすいのです。

しかしこのケースは
でもそんな植林材の中から
「不思議な杢」のみを使って制作した
「かなり面白い時計ケース」でもあります。

気になる方はお声かけてくださ〜い。
その時には
もう無いかもしれませんが……




あと、
数点、メイプルのいいやつ系がありましたので
ちょっとご案内させていただきます。

メイプル材の多くは
杢(木目の事)が少ない
「プレーンなメイプル」がほとんどで
ソウルバードではこの材に
ライトブラウンのカラーリングをし
もっともお安い価格帯の時計ケースとしてご用意しています。

次に
雲のようなモクモクの模様が入る
「キルテッドメイプル」

そして、まるで鳥の眼のような木目が現れる
「バーズアイメイプル」

アップで撮影すると
ただ穴があいているようにしかみえませんが。



そして、
「カーリーメイプル」(タイガーメイプル)
などがあります。

カーリーメイプル、
結構久しぶりの登場ですね!!




あとは予算オーバーしてしまいますが…

「おいでやすこが」の
「言えよ!!」
ってコントにならないように

先にご紹介しておきます。

ご予算はオーバーしてしまうので
で申し訳ないのですが…

憧れの
ローズウッドですね!
はい、
憧れです。

まずはホンジュラスローズウッド!

はい。ワシントン条約で
規制が入っているブツですね!

ホンジュラスローズウッド

はいはい、南米系のレアなブツです。
ホンジュラス〜と言われても
よくわからないエリアの南米ですね!

ソウルバードでも
過去一度もご案内ができていない
ちょーレア材です。

ワシントン条約の規制で
ジリジリと
価格が上昇しています。




次に一気にエリアが代わり
インドローズ!

これもレアですね〜。

インド北部エリアのローズで
取引禁止はもとより
さらに厳しい
「伐採禁止」の部類に入っています。

この材は
昭和40年代に日本に丸太の状態で輸入され
板材に製材されたブツです。
その後、
縁があって
ソウルバードへ降臨してきました。

でも、もう、オイルを塗らなくてもいいくらいに
オイリーな感触です。

この手のやつって
じっくり、じっくりと育てていく材です。
「セッカチ」なお客さまには不向きかと思います。

今年よりは来年。
5年後よりは10年後。
10年後より50年後。
そして、次の世代へと
サスティナブルに考えてください。

時間をかける事で
価値と喜びが上昇していく
逸品です。

しか〜し

「高額〜!」
です。

確かに、
「黒柿材」や
「ハワイアンコア」
といった超高級材のような価格ではありませんが
でも、高額だと思います。

養殖の魚より
「やっぱり天然魚だよね〜」
っというお客様、

あの
「ねっとり〜が好き!!」

そんな方には
「ねっとり〜」
「テカテカ〜」
になっていくローズウッドは
ピカイチのおすすめの材です。

地味~にオイルを塗って
楽しんでください。

いつかは
あの雰囲気をまとった
「ヨーロッパのアンティーク家具」
のような趣を醸し出しているでしょう。

地味〜にオイルを塗り続けてください!




そして…

あの高級材のハワイアンコアも
モノによっては20万円程で入手可能です。

何か木材に問題があるわけではなく
ただ
「木目がシンプル!」
というだけです。

ちなみにこちらです。

この画像を見ると
ビミョーにしか木目が見えませんが
現物のブツには
ちゃんと木目があります。

ただし、ドキドキするような
初恋の
感じでありません。

ですので
「お財布に優しい〜コア」となっています。

今さら
そこまで「ドキドキ」までしなくても…

っというお客さまには
ピッタンコです。

この材を丁寧に丁寧に研磨して
鏡面塗装を行うと

「なんて事でしょう!!」

美しい
ハワイアンコア材の時計ケースが出来がるのです。




そうそう!

「あの新聞紙に乗っかっているのが…」

「ブビンガ材です」

はい、

T様がご来店のさいに
ちょ〜ど
オイルを塗っていまして
新聞紙の上に鎮座していました。

ご紹介が遅れてしまいましたが
絶妙のタイミングです。

まだ2回ほどしか
オイルを塗っていませんので
「ねっとり感」は出ていませんね!

今後、何度も何度も
繰り返しオイルを塗って行く事で
目指す「ねっとり感」が生まれてきます。

かなり気の長〜い工程です。

どちらかと言うと
普通に「鏡面仕上げ」だったり
漆を塗り込む「拭き漆」の方が
よっぽど早く、簡単なのですが
このローズ系のブビンガ材!
「ねっとり感」のオイル仕上が一番似合うようです。

ですので
「地味〜に」
手作業でオイルを塗り込み続けます。

地味!!!

ちなみに
全部赤みの右側のケースより
サップ(白い部分)が入ったケースの方が
お値段は高くなっています。

理由は
ただ単に
「面白いから」
です。




トレー材も一気にチェックです。

よくお問い合わせをいただくトレーですが、
実は様々な事情がありまして……..

物理的には
どんな木材でも制作が可能です。

ただし、それは
金額を無視してしまえば、
っということです。

つまり
時計ケースを制作できるような
「厚み」「幅」「長さ」が揃った、
時計ケースも制作できる材で
あえて「時計トレー」を制作した場合、
「当たり前の金額の時計トレー」となってしまいます。

逆に
時計ケースを制作する際に発生する
「端材」で制作する場合、
「価値に対して割安な時計トレー」が出来上がります。

これは
「コスパが良い!」という事になります。

できれば、
「そのタイミングを待つ!」

という方法が
一番、楽しくて、面白いかもしれません。

ただし、
「何時端材が出るかわからない」
という問題もつきまといます。

納期がタイトな
「時計メーカー」様や
多くの時計をお客様にお見せする必要がある
「時計店」様の場合、
そんなに気長なことは言ってられません。

この場合、
若干、雑に扱ってもOKな
「ウォールナット」が一番おすすめです。

北米産で安定供給が維持されていて
お値段も安定しています。

さらには鏡面仕上げではありませんから
「ざっくり」扱ってもOKです。

傷がついても
「それもアジ!」的に考えられます。

まツ、管理が「楽」という事です。

しか〜し
「こだわる」お客さまの場合
「端材を待つ!」
っという方法がベストかと思います。

ソウルバードでは常に時計ケースを制作していますので
「常に端材」が発生します。

その際には
SUSでもご案内しますが
池袋では
常にご用意しています。

参考までに
Tさまがご来店された日には
こんな感じでした!

結構あります。

画像をご覧いただくと
「型番」と「金額」が記載されています。

これは
木材の「価値」「厚み」「長さ」「杢」によって
決定していきます。

ただし、
全〜部、端材ですので
「同じものを2個欲しい!
なんてことはできません。

全て
「1個のみ」しか制作ができません。

そんな
「世界で1個だけの」
「2度と作れないかもしれない時計トレー」

を希望されるお客様にはおすすめです。

ただし、何度も申し上げますが
「端材」ですので
「ご希望のサイズ」が制作できない可能性がございます。

あくまで
「全て受け入れる〜」
というお客様向け!
とご理解ください。

だって20cmしかない木材は
今更頑張っても
25cmに伸ばすことはできませんから…

でも
ここまでして
レザーを貼って
この金額!!!!!

これは…..もう…….
「ほぼタダどうぜんですから〜」

と考えています。
驚くようなサービス品だと思っています。




長々と書いてしまいましたが…

Tさま、決定しました!!

「ジミーにオイルを塗る」事を喜びとして

「ブビンガ材です」!!

はい、
サップが入った左側です。

いっちゃいましたね!
「クセありブビンガ」です。

それと

「ハワイアンコア材」の時計トレー!!

これは鏡面仕上で納品させていただきます。

端材の中から
「トレーの長い辺に使う」
「この面を上」
なんてメモが見えますね〜

これはお客様と相談の上、決定しています。

出来るだけ、
「ご希望通りの時計トレーを制作するため」なんですが

ここまですると
「ほぼ趣味の世界!!!!」
という事で

計算ができるお客様なら
ご理解いただけたと思いますが

やってる事が

「商売」じゃなくて

「趣味〜」

の世界です。

正しく考えたら
「アホ」な事をしているように見えますが

私たちは

これを

「面白いっ!!」

と思って

「楽しんで」向き合ってます。

T様、
いい「ブツ」見つけましたね!!




時は経ち…




それから4ヶ月経過し、完成です。

まずは納品前に撮影した画像を数枚!

ブビンガのシラタケース!
面白いですね。


ハワイアンコアのトレーも
予定していた以上に
杢がはっきり出ています。


そしてお受け取りでご来店のT様の
時計をお借りして…

鮮やかーなロイヤルブルーで統一された
時計ケースと時計トレー。
何とも美しい仕上がりです。

4ヶ月の長〜い制作時間をいただきましたが
ご満足いたただけたようで幸いです。

T様、お楽しみくださいませ!!

ご注文ありがとうございました!!