本日ご来店のお客様、S様は時計への情熱がひときわ熱いお客様。
『収納する懐中時計にグレードが合う時計ケースを探しています』と、笑顔で話してくださいました。
S様は、この懐中時計への深い愛情をお持ちで、『大切な時計には、相応しいケースが必要だと考えています』と、おっしゃっていました。
そのお言葉、本当に嬉しいです!
私たちもS様の熱い想いに応えたい気持ちでいっぱいです。
S様のアイデアが、どんな素晴らしい形に変わるのか、今からワクワクしています!」
ポイントは内装加工にあり!~簡単?いやいや、そこが肝~
以前からソウルバードのサイトをチェックしていただいていたS様。
ついに初来店!ありがとうございます。
さて、懐中時計ケースのオーダー、実はこれがまた一筋縄ではいかないのです。
フリースペース派 vs 専用サイズ派
まず、ケースの内装仕上げには2つのパターンがあります。
1:フリースペース派:
「時計をポンと置くだけ。汎用性が高く内装の仕上げ工程にも極端な複雑さはありません」
このフリースペースですと収納される懐中時計も
特別に大きなものでなければ色んなサイズの時計を
入れ替えて使うこともできて結構便利にお使いいただけます。
懐中時計を置く部分には、もちろんクッション性をもたせていますので
時計にも優しい設計になっています。
また、高コストの内装加工ではありませんので
将来的に懐中時計用からリストウオッチ用への内装リフォームも
ハードルが低いと思います。
2:専用サイズ派:
「ピッタリ収まる専用サイズだ!」
ご覧の通り、懐中時計のサイズにあわせて作り込みます。
確かに専用サイズは、『 特別感 』 がダンチです。
その代わり、めちゃくちゃ面倒な工程が必要なんですけどね…
まあ、そこが時計ケース専門店の腕の見せどころです。
収納される懐中時計のサイズや厚みを細かく計測し
専用に仕上げを行いますので
かなり高難度で複雑な制作工程になります。
ソウルバードが使用する内装材は全てナチュラルな本革です。
つまり、一枚のレザーでも均一の厚みや、同じ柔らかさでである事は絶対にありません。
場所によって0.5mmの部分もあれば、0.7mmの部分もあったり、
繊維が硬い部分や柔らかい部分もあります。
そんな本革を使ってこの写真のように仕上げるには
かなりの手間と時間を要します。
でもその分、雰囲気はバッチリ!! って感じで
お客様の満足度も高く
まさに専用の懐中時計ケースにたどり着きます。
S様も「せっかくの時計が泳ぐ時計ケースなんてあり得ない!」
「このケースを見た人がビックリするくらいの専用感を!」
と、おっしゃっていました(たぶん心の中で)。
S様はこの専用サイズのパターンで仕上げを行う事になりました。
ありがとうございま〜す。
懐中時計は ミニッツ リピーター
さて、肝心の時計はというと、かなりの年数を生きぬいたブレゲのミニッツリピーター!
「音で時間を教えてくれる懐中時計」なんて、もはや文化財レベルです。
S様、「せっかくなので音も聞いてみてください」と時計を取り出し、チャイムの音色を!!
クリスタルな感じの小さな鐘の音がなんとも贅沢ですね。
池袋の工房が一気にタイムスリップし至福の時間です。
ちなみにこの時計、裏蓋には歴史を感じる刻印がびっしり。
この個体はご家族から譲り受けられた、とのことで
「持つべき人が持つと ここまで時計がグッドコンディションに保たれるんだな…」と感じました。
その刻印内容も大変興味深いものでしたが、
いろんな情報が含まれていましたので 画像の掲載は控えさせていただきました。
S様、貴重な体験誠にありがとうございました!!
本体の木材は…重厚感マシマシ!
世界中に腕時計コレクターは数多く存在しますが、
時計ケースの木材から内装のレザーまで、
自分だけの理想を形にするフルオーダーにこだわる方は、限られた方々です。
時計ケースのオーダーメイドは、単なる収納を超え、愛蔵品への深い愛情を表現する、唯一無二の体験だと思います。
様々な木材を比較されたS様。
目に留まったのは、南米産の「シャム柿(ジリコテ)」でした。
黒柿に似た深みのある黒色と美しい木目が特徴で、
硬く耐久性にも優れたその風格から高級家具材としても珍重されています。
参考までにリストウオッチ用に製作した
シャム柿の時計ケースがこちらです。
このブログ作成中の段階では1個体のみストックがございます。
https://soulbird.co.jp/no-0799/
この木材は南米産のシャム柿という名前で取引される材ですが
本名はジリコテ(ziricote)です。
高額材の黒柿に似た雰囲気があるので
シャム柿という名前で流通してきた歴史があるようです。
乾燥させるのが大変難しい材なんですが
一旦乾燥させてしまうと「グッ」と安定する良い材です。
一見、縞黒檀のような雰囲気もありますが比べてみると
その木目や色合いは微妙に違います。
(左がシャム柿、右が縞黒檀)
そして ちょうどこの日、池袋に板状のシャム柿材のストックが!!
S様、その材を手に取ると、
重厚感と美しさに
「これしかない!」と即決です。
ありがとうございま〜す。
お選びになったシャム柿材はこちら!!
かなりの重厚な材です。
S様は、ケースのサイズにもご希望をお持ちです。
一般的な1本用時計ケースより一回り大きな、12cm角の正方形に。
そして、懐中時計を収納するのに最適な高さ8cmにカスタマイズ。
通常のリストウオッチ用の1本用サイズケースと比較すると、
天板サイズが少し大きくなり、高さが少し低くなる、という雰囲気ですね。
この部分を天板に木取りします。
懐中時計用としては、いいサイズ感で
重厚感と高級感を兼ね備えた、
まさにS様だけの特別な時計ケース制作が楽しみです。
板材からの製作ですので
ちょっとしたお時間が必要ですが
世界に一つだけの懐中時計ケースを
しっかりと製作をさせていただきまして
また、このブログに追記させていただきま〜す。
S様、ご来店誠にありがとうございました。
そして、貴重なミニッツリピーターも拝見させていただきまして
ありがとうございました!!
追伸です
懐中時計用の仕上げですが、
ご要望によっては
さらに複雑な仕上げも行なっています。
「純正のチェーンも外さずに収納したい!!」というお客様、
ご期待の添えるように工夫を行います。
この画像ですが、
懐中時計を置くスペースの上の部分(リューズ部分)に少しだけ空間がありますね。
これはチェーンを通すスペースなっていまして、
それを、もち上げると
下にチェーンの収納スペースが現れてきます。
つまり、「二重底」で仕上げています。
下にチェーン、上に懐中時計というかなりの複雑仕様です。
本革でこの仕上げを行うのは
かなりの忍耐と工程が必要になりますが、
ここまでの複雑な仕上げをご希望のお客様は
どうぞご相談くださいませ。
そして、
ケース本体サイズを大きくして
「贅沢収納!!」も承っています。
そもそも、こういった
懐中時計用のオーダーを多くいただけるようになったきっかけですが
パテックさんのキャリバー89用の内装加工でした。
大変貴重な経験をさせていただきました!!
*WEB上にupする事はできませんが、
池袋ではキャリバー89が収納されたお写真をご覧いたたけます。
世界に4個しかない個体のうちの1つですので
かなりレアかと。